【感想】『機動戦士ガンダム 水星の魔女』「呪い」が「祝福」に変わる軌跡

特撮・アニメ

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』はガンダムファンである僕に新しい刺激を与えてくれた作品となった。

普段ガンダムを知らない友達や母親がこの作品をきっかけにガンダムを見始め、母親に至ってはガンプラを買ってしまうほどまでにハマってしまったのだ。

この半年以上、常に僕に話題を提供し続けてくれた『水星の魔女』。

僕はこの作品を「ガンダムの【呪い】が【祝福】へと変わる物語」だと思っている。

そう思ったのは、大人世代に縛られていた子供たちが、自分たちの意志で進み始めたからなのだ。

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「ガンダムの呪い」とは何か?

本作のガンダムは「呪われた兵器」として描かれている。これには2つの意味がある。

1つ目は単純に兵器としての呪いだ。

高い性能を発揮するかわりに、操縦者の命を蝕み、最悪死をもたらす

2つ目はそんなガンダムを見てきた大人世代からの呪いである。

「アーシアン(地球に住む者たち)」と「スペーシアン(宇宙に住む者たち)」が衝突する世界を舞台に、ガンダムの存在は争いの種となってしまう。

ガンダムの技術を兵器としか見られない大人世代は、次代の子供達に自分達のエゴや生き方を強要して苦しませることになるのだ。

その象徴ともいえる存在が、ガンダムTVシリーズ初の女性主人公スレッタ・マーキュリーである。

水星からの編入生としてアスティカシア高等専門学園にやってきた彼女は、慣れない環境のせいか、最初は極度の人見知りとして描かれていた。

そんなスレッタは母プロスレラだけには全幅の信頼を寄せ、彼女の言う事は気味が悪いレベルで全肯定している。

プロスペラが自らの目的のために娘を利用していることを知らずに。

母から教わった「逃げたら1つ、進めば2つ」は良くも悪くもスレッタを鼓舞させ、本人が気づかないうちにガンダムを兵器として動かして人の命を奪うところまで導いてしまった。

操縦者の命を蝕むガンダムに乗りながら何故か平気なスレッタだが、ある意味で兵器としてのガンダムや大人世代からの呪いを一身に受けているといえる。

子供達はどう動くのか?

物語の転機となったのは、やはり「株式会社ガンダム」の設立だろう。

スレッタとミオリネ・レンブラン、そして地球寮の学生達で立ち上げた会社だ。

事業内容はガンダムの技術を医療分野に転用すること。

つまり、人の命を奪う兵器だったガンダムが人の命を救うことに繋がるのだ。

これはかつてガンダムを開発していたヴァナディース機関が本来目指していた理念である。

そして、ガンダムを兵器としか見てない大人世代に向けた、子供世代の反抗という解釈もできる。

主人公スレッタにも転機が訪れる。

それは、(母プロスペラとミオリネがスレッタを大切にするが故に共謀した策によって)愛機ガンダム・エアリアルを取られたことである。

全てを失い、一時は引きこもっていたスレッタだが、学園が襲撃された後は、率先して復興作業に務めていた。

そこでスレッタは気づく。

「何も手に入らなくても、できることをするしかない」と。

それは、母に教えられたわけではない、スレッタ自身が導き出したものである。

結果的に呪いから解放されたスレッタは、プロスペラを止めるべく、自らの意志で再びガンダムに乗ることになる。

最後に

『水星の魔女』は一応ハッピーエンドにはなったが、全ての問題が解決したわけではない。

アーシアンとスペーシアンの争いはまだまだ続く。

それでも、希望が見える終わり方を残している。

ガンダムの技術は「株式会社ガンダム」が開発した義足に受け継がれ、スレッタやミオリネを始めとする子供たちは、自分たちの意志で前へと進み続けている。

義足はそんなスレッタたちに送る、今まで「呪われた兵器」として扱われてきたガンダムからの「祝福」かもしれないと感じた。

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(文・西森圭人)

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