2006年の映画化発表から18年、ついに『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が劇場公開された。

当時小学生だった僕は、社会人になるまで待ってしまった!
『SEED』シリーズへの思い入れが強い僕としては、約20年待たされた作品への期待と不安で胸がいっぱいになっていた。
そして公開初日、朝イチで乗り込んだ僕に、様々な感情がデスティニーガンダムの分身のように押し寄せてきた。
良かった、驚いた、泣いた、笑った、ツッコんだ。
あんな映画を観せられた後に美味しい焼き鳥を食べても味がわかるわけがない。
あえて言おう、この映画は〈愛〉である。
色々な意味で〈愛〉に溢れた神映画である。
遺伝子を超越した〈愛〉
前作『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の戦いから2年後、世界平和監視機構コンパスが設立され、主人公キラ・ヤマトはその一員として各地の紛争に介入していく。
終わらない争いに苦悩するキラ達の前に、自分達こそが人類の頂点だと主張する「ファウンデーション王国」が立ちはだかる、というお話。
今回の劇場版の良かった点の1つに、テーマがわかりやすかったことが挙げられる。
ラクス・クラインの台詞 「必要だから愛するのではありません!愛しているから必要なのです!」は、それを象徴する本作屈指の名言だと思った。
遺伝子や能力だけでその人の価値が決まるのではない、〈愛〉こそが大事なのだ、と。
遺伝子操作でオルフェと結ばれることを運命づけられても、キラを愛すると選んだラクス。
そんな彼女が放ったからこそ力強く、遺伝子や差別問題を扱ってきた『SEED』らしいテーマだといえる。
さらに本作のテーマを後押ししたのが、シン・アスカとルナマリア・ホークの関係性である。
『SEED DESTINY』で結ばれたカップルだが、傷の舐め合いから始まったこともあり、どこか芋づる式で結ばれた感が強かった。
特にルナマリアの方は、最初は(シンよりも優秀とされる)アスランが好きだったので、劇中でもアグネスに「シンで妥協したのでは?」と指摘されてしまう。
しかし劇場版のルナマリアは、行方不明になったシンを本気で心配し、アグネスにも「好きだけど?悪い?」と言い返した。
良くも悪くも子供っぽいシンでも、スペック関係なく本気で愛していることが伝わってくる。
とにかく、遺伝子や能力だけで人の価値を決める敵勢力に、愛の力で立ち向かっていく構図がわかりやすくて良かった。

つまりアスランのエ◯妄想もただのギャグでは片付けられない……のか?
スタッフ・作り手からの〈愛〉

手書きとCGを合わせた映像のクオリティの高さ、大迫力のMS・艦隊戦など、語り始めるとキリがないので、ここではキャラクター描写について語りたい。
今回はとにかくキャラクターが良かった。
その代表ともいえるが、やはり主役のキラとラクスである。
この2人は自分の主張や気持ちをあまり表に出さないためか、(特に『DESTINY』では)2人の考えに理解・共感するのが難しい場面があった。
だが今回は、2人とも人間味あふれる描写が多く、テレビシリーズ以上に好感を持てた。
特にラクスは、料理の場面や先述した台詞など、テレビシリーズではわかりにくかった女の子らしさが押し出されていた。
キラも「君らが弱いから!」と吐き出すなど、『SEED』時代を思い出させる弱い部分をさらけ出したのが良く、むしろ懐かしさすら感じてしまった。

キラやラクスに限らず、どのキャラクターも大活躍で、株が上がることしかなかったよ!
懐かしさといえばで思い出すのが、本作はファンサービスも充実していた。
「トダカ一佐仕込みの百発百外し」など、『SEED』ファンなら気づける小ネタが盛りだくさんだった。
特に嬉しかったのが、主人公サイドが物語後半でテレビシリーズに登場したMSを使ったことだ。
『SEED』のデュエル、バスターは言わずもがな、『DESTINY』当時では最強だったストフリ、インジャ、デスティニーまでもが、劇場版では旧型扱いされている。
追加装備をつけて改修されたかつての英雄達が、性能が上のブラックナイツ相手に大活躍する展開がアツい!
そして、マイティーストライクフリーダムの登場と共に流れたのは、これも『SEED』ファンならお馴染みT.M.Revolutionの「Meteor -ミーティア-」。

かつて僕と同じように「舞い降りる剣」で脳を焼かれた人にはたまらない演出です!
キャラクター描写といい、ファンサービスといい、18年温めてきた作り手からの〈愛〉を存分に感じることができた。
最後に
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、僕にとって18年待って良かったと思える作品だった。

すみません、まだ5回しか観てません……泣
そして、『SEED』シリーズの集大成として「SEEDを愛して良かった」と胸を張って言えるようになったことに感謝したい。
18年の呪縛を解き放ってくれた神映画に、〈愛〉を込めて、ありがとう!
(文・西森圭人)
コメント