【感想】『変な家』間取りは読めても、人の心は読めない

この記事は物語の核心に迫るネタバレはありませんが、内容には触れますので、未読の方は自己責任でお願いします。

去年『変な家』という本を読んだ。

実写映画化されるということで、たまたまYouTubeで宣伝動画を見たのがきっかけだ。

内容は家の間取り図から推理していく不動産×ミステリー×ホラーもの。

ミステリーが好きで、YouTubeでルームツアー動画をよく見る僕からすれば、興味をそそられる組み合わせだ。

ホラー要素もあるが、ホラーが苦手な僕でも、流しそうめんのようにスルスルと読むことができた。

(僕のような普段あまり本を読まない人にもオススメ!)

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現場に行かないからこそ恐い

『変な家』は、ウェブライターの雨穴(うけつ)氏の記事投稿が最初である。

そこからYouTubeの動画として公開され、その続きが書籍版で書かれるという変わった出自を持つ作品だ。

(ちなみに僕は動画から入って書籍版を買いました!)

主人公は、知人から家を買おうか悩んでいると相談を受け、貰った家の間取り図から奇妙な違和感を覚える。

謎の空間、窓のない部屋、子供部屋の位置など。 知り合いの建築士・栗原と考察していくにつれて、ある恐ろしい真実が明かされる、というお話。

まず面白いところは、主人公と栗原は実際の現場に行っていないことだ。

つまり、2人の推理はあくまで図面だけで考えたもので、推測の域を出ていない。

しかし、同時期に起こった別の事件との繋がり・関係者の証言から、徐々に2人の仮説が現実味を帯びていく。

この「現場に行かない」という行為が生み出す絶妙な恐さが、ホラーが苦手な僕には丁度良いと感じた。

最大の魅力は「読み終わった後」にある!

物語後半では、真実が次々と明らかになっていく。 なぜあんな間取りなのか、住んでいた家族は何者なのか、そもそも全ての始まりは何なのか、など。

間取りを通して、様々な人物の思惑が絡み合う。 急に登場人物が増えて少し読み辛くもあったが、きちんと前半の伏線を回収してくれたのは良かった。

そして、この本の最大の魅力は「読み終わった後」にあると考える。

一応事件は解決するが、この本はわざと謎を残して、不完全燃焼で終えている。

「あの人はもしかしてこんな考えだったのでは?」 もちろんこれも推測のままである。

(家の間取りは読めても、人の本心までは最後まで読み切れないという皮肉)

読み終わった後も考察の余地があり、胸に残った気持ち悪さ・モヤモヤ感が返って心地よく感じてしまう。

この心地よさが『変な家』の持ち味ではないだろうか。

最後に

これから読む人には、ぜひ文庫版をオススメしたい。

文庫版のあとがきには、栗原さんの解説が載せられている。

そこで栗原さんから、あるとんでもない可能性を提示されるのだ。

(まるで冷や水をぶっかけられた気分になります)

いかに自分が物事を都合よく考え、先入観にとらわれていたのかを実感させられる。

あとがきの後に栗原さんが指摘した該当箇所を読めば、きっと印象が変わるだろう。

ぜひこの本を骨の髄まで楽しんでほしい。

(文・西森圭人)

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