【感想】『ウルトラマンコスモス』大切なのは夢を諦めないこと

特撮・アニメ

僕が初めて観た特撮ヒーローは、4歳の頃に観た『ウルトラマンコスモス』だ。

『コスモス』は「怪獣を無闇に倒さず保護する」というそれまでのウルトラ作品にはなかった挑戦をした。

「怪獣保護」の考え方は劇中でも様々な意見が飛び交った。

しかし、怪獣保護が正しいかどうかはそこまで重要ではない。これは大人になって観返して新たに気づいた僕の考えだ。

大事なのは、主人公・春野ムサシが怪獣保護という夢を叶えるために決して諦めなかったことである。

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主人公ムサシの成長

春野ムサシは怪獣を愛する心優しき青年だ。普段はTEAM EYESの隊員として、時にはウルトラマンコスモスと一体化して、怪獣たちを救おうと努めた。

だが、良くも悪くも理想論に走る場面が多く、特に正反対の考えを持つフブキ隊員や防衛軍との対立は、ムサシに怪獣保護の難しさや現実を突きつけた。

様々な考えに触れてきたムサシは、壁にぶつかって悩みながらも、少しずつ乗り越えて大きく成長していくことになる。

ムサシの成長を顕著に感じたのは33話。防衛軍の軍人ナガレ・ジュンヤが登場した回だ。

ナガレは怪獣災害で家族を失い、怪獣に対して強い憎しみを持っていた。

怪獣を倒そうとするナガレを必死に止めるムサシ。ムサシはナガレの悲しみに理解しつつも、全ての怪獣が悪いわけではないと訴える。

異なる相手の考えに寄り添う優しさ、その上で自分の信念を曲げない強さ、そして現実と向き合うことを恐れない勇気を持ったムサシの成長だと感じた。

諦めない心が結末を決める

このムサシの成長は、終盤の対カオスヘッダー戦にも大きな影響を与えていく。

TVシリーズ全話を通しての敵として登場するカオスヘッダーは、大人しい怪獣を暴走させたり、コピー怪獣を作って暴れさせたりと、「地球の平和を脅かす敵」として描かれる面が強かった。

中盤に入り、人間を取り込んだカオスヘッダーは人間の心を学習する。これに気づいたムサシは「カオスヘッダーにも心があるのでは?」と考え、和解への道を進むことになる。

最終回が近づくにつれて熾烈さを増していく対カオスヘッダー戦。

感情を覚えたカオスヘッダーはコスモスへの憎しみを明確に示していく。ボロボロになるムサシとコスモス、怪獣保護という本来の任務から逸れていくTEAM EYES。

カオスヘッダーとの戦いは、皮肉にもナガレ・ジュンヤら防衛軍との共闘を実現させた。

EYESメンバー、そしてコスモスでさえもカオスヘッダー殲滅を考える中、ムサシだけは倒すだけの戦いに疑問を抱いていた

EYESの仲間たちは「ムサシの気持ちはわかるが、戦うしかない」とムサシを諭すが、それでもムサシは諦めなかった。

カオスヘッダーが人間の心を理解できるなら、争いを憎む気持ちも理解できるはず。

ムサシはただ1人、かつてのナガレの時と同じように、カオスヘッダーの心に向き合い続けた。

最後に

『コスモス』が「ラスボスとの和解」という珍しい結末を迎えれたのは、ムサシが夢を追うことを諦めなかったからである。

しかも、ただの頭でっかちな理想論ではなく、異なる考えを持つ他者とぶつかり続け、様々な課題を乗り越えてきた結果だ。

『ウルトラマンコスモス』はただ怪獣と共存する物語ではなく、1人の青年が夢を叶えるために努力する「真の勇者」を目指した物語だと思った。

(文・西森圭人)

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