今回は、僕がおすすめしたい、クセが強いミステリー小説を3つ紹介します。
もちろん僕の好みも入ってますが、何かしらの賞やランキングで、客観的に優れていると評価された作品をチョイスしています。
普通のミステリーでは物足りない、何か刺激が欲しいと思った人にはぜひ読んでほしいです。
3作品のうち2作品は下ネタがあるので、苦手な人は注意してください。
①『変な家』(著・雨穴)

「第17回 オリコン年間“本”ランキング 2024」年間文庫ランキング1位。
ウェブライター雨穴(うけつ)氏の記事投稿が最初で、そこからYouTubeの動画、書籍化、さらに実写映画化もされました。
主人公は知人から家を買おうか悩んでいると相談を受け、貰った家の間取り図から奇妙な違和感を覚えます。知り合いの建築士・栗原と考察していくにつれ、ある恐ろしい真実が明かされる、というホラーミステリー。
あくまで間取り図から推測するだけですが、同時期に起こった別の事件との繋がり・関係者の証言から、徐々に仮説が現実味を帯びていきます。
また(雨穴作品あるあるの)様々な人間の思惑や深い闇が描かれ、事件が解決してもわざと考察の余地を残しているのが特徴です。
「あの人はもしかしてこんな考えだったのでは?」と気づいても推測の域を出ず、間取りは読めても人の本心は最後まで読みきれないという皮肉が効いています。

栗原さんのあとがきが載ってる文庫版がオススメ!
②『六枚のとんかつ』(著・蘇部健一)

第3回メフィスト賞受賞作。
「バカミス」(読者の予想斜め上を行く良い意味でバカバカしいミステリー)と呼ばれるジャンルの作品。
保険調査員の主人公が、推理作家の友人や太った職場の後輩と共に様々な事件に巻き込まれる短編集です。(若干の性的描写あり)
お下品かつバカバカしい推理や真相の数々、言い換えれば、トリックは単純なので(ある意味で)初心者には優しいかもしれません。
個人的には以下3つのお話がオススメです!
・なぜか【ガッツ石松】が出てくる『音の気がかり』
・すべらない話みたいなオチが特徴の『しおかぜ17号四十九分の壁』
・まさかの“とんかつ”が事件解決の糸口になる『六枚のとんかつ』(または違う話だけど同じトリックを書いた『五枚のとんかつ』)
③『虚構推理』(著・城平京)

第12回本格ミステリ大賞受賞作で、漫画・アニメにもなっています。
妖怪たちの知恵の神になった少女・岩永琴子と、人外の身体を持つ青年・桜川九郎が、想像力から生まれた怪異「鋼人七瀬」に立ち向かうオカルトミステリー。
最大の特徴は、真実を解明するのではなく、嘘を用いて「周りが納得できる真相」を論理的に作り出すことです。
わかりやすくいえば「犯人は妖怪だけど、事実を世に出してはいけないので【犯人は妖怪ではない】という推理に上書きする」ということ。

要するに『妖◯ウォッチ』の理屈は通用しません。
また、良家のお嬢様である岩永琴子が、恋愛面ではかなり粘着質で、古風な下ネタ発言をするギャップにも注目です。
かなり国語力が試されるので、活字が辛い人には漫画版かアニメ版の方が良いかもしれません。
最後に
一部の作品はメディアミックス化もしてるので、活字本が辛かったら、漫画や映像作品から入るのもアリでしょう。
興味があればぜひ読んでみてください。
(文・西森圭人)
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